WEB予約はこちら
MENU

blog

医院案内|川崎市幸区の小児科・皮膚科|ミューザ川崎こどもクリニック

インフルエンザ関連脳症とは?

インフルエンザ関連脳症とは?
— ワクチンの意義と、ご家庭で気をつけたいポイント —

インフルエンザは、毎年流行を繰り返す身近な感染症です。しかし、その中に
はごくまれではあるものの、命にかかわる重い合併症が隠れています。その代
表が インフルエンザ関連脳症(Influenza-Associated Encephalopathy:IAE)
です。

■ インフルエンザ脳症は誰に起こる?
インフルエンザ脳症は、発症から短時間のうちにけいれんや意識障害が現れ、
死亡率は約30%で、後遺症も約25-35%の子どもに見られる重篤な疾患です。
特に 5歳以下に多いことが知られていますが、国立感染症研究所のまとめを見
ると、小学生でも発症例があり、決して乳幼児だけの病気ではありません。

症状は、けいれん、意識がもうろうとする、幻覚や異常言動(泣き叫ぶ・意味
不明の行動・人の認識ができないなど)など多岐にわたり、早急な医療介入が
必要です。

■ 脳症を「脳炎」と混同しないために
似ている言葉ですが、医学的には意味が異なります。
 脳炎:ウイルスが直接脳に入り込み、炎症や障害を起こすもの
 脳症:ウイルスに対する体の反応(免疫反応の暴走)によって脳が障害
を受けるもの
インフルエンザで多いのは後者で、こちらが重症化の主な原因です。

■ ワクチン接種と脳症のリスク
一番の予防法はインフルエンザにかからないことです。そのためにはワクチン
接種が最も有効です。インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザ
に絶対にかからない、というものではありませんが、インフルエンザの発病を
予防する効果や、発病後の重症化や死亡を予防する効果があることが分かって
います。

最近の海外の研究では、「インフルエンザ脳症を発症した子どもは、ワクチン
未接種が非常に多い」ことを示すデータが報告されています。
 アメリカの報告では、インフルエンザ脳症109例のうち、ワクチンを接
種した子どもは16%にとどまり、同じシーズンのアメリカの子どもの接
種率(55%)と比べると明らかに少数でした。
 北イタリアや中国の報告でも、インフルエンザ脳症を発症した小児のほ
ぼ全員がワクチン未接種でした。

ワクチンがインフルエンザ脳症を完全に防ぐわけではありませんが、インフル
エンザ脳症において未接種の子どもが多いことから、予防接種がインフルエン
ザ脳症のリスクを下げる手段であることを示しています。

■ では、治療薬に予防効果はある?
抗インフルエンザ薬(タミフルやイナビルなど)は有熱期間の短縮、早期投与
による重症化予防効果があることが示されていますが、脳症を直接防ぐ効果は
ないとされています。

解熱剤は、アセトアミノフェン(カロナール・コカール・アンヒバ等)が基本
です。
ボルタレン・ポンタールなど一部の解熱剤は脳症や死亡率が増える可能性が報
告されているため、注意が必要です。
また、アスピリンは「ライ症候群(肝障害を伴う急性脳症)」の原因になるた
め、インフルエンザでは使用できません。

■ 発症後、ご家庭で特に気をつけたい3つのこと
インフルエンザは「熱が下がったら治った」と思われがちですが、解熱後も合
併症が起きることがあります。

① 解熱後48時間は無理をさせない
熱が下がっても体の中の炎症は続いています。

二峰性の発熱、呼吸状態の悪化、脳症の初期症状もこのタイミングで見られま
す。

② 夜間に一人にしない
特に 10〜20代は異常行動が夜間に起きやすいことが知られています。
小児の脳症も、発熱から12〜24時間以内の夜に起きやすい傾向があります。

③ 転落・飛び出し事故の防止
インフルエンザでは異常行動に注意が必要です。
 窓とベランダの鍵、玄関の鍵を必ずかける
 できる限り、1階の部屋か、窓から離れた部屋で保護者と一緒に寝る
 高層階にお住まいの場合は、特に注意が必要
子どもから絶対に目を離さず、必ず大人が付き添ってください。

■ 異常言動が見られたら?
こんな様子が続いたり、悪化する場合はインフルエンザ脳症を疑って受診して
ください。
 人を正しく認識できない
 幻覚を見る、異常に怖がる
 意味が通らない言動
 急に走り出す・外に出ようとする
 けいれん
 意識が戻りにくい、呼んでも返事がない、反応がない

逆に、短時間でおさまる軽い熱せん妄や短い熱性けいれんなら経過を見ること
もありますが、不安なときは、ためらわず医療機関にご相談ください。

■ まとめ:脳症は「まれ」だけれど、確かに存在する
インフルエンザ脳症は、年に数百例と頻度は高くありません。しかし、発症す
ると重い後遺症や死亡につながることがあり、ご家族にとって非常に大きな負
担となります。
だからこそ、
 ワクチンで発症リスクを下げる
 発熱中〜解熱後2日間は慎重に過ごす
 子どもから目を離さず、異常があればすぐ相談する
この3つが、子どもを守るうえでとても重要です。

インフルエンザが流行する季節、少しでもご家庭の安心につながれば幸いです

院長 河野 一樹
記事監修
院長 河野 一樹

慶応義塾大学病院 小児科、大和市立病院 小児科、埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科、横浜市立市民病院 小児科、東京都立清瀬小児病院 小児循環器科。

日本小児科学会 小児科専門医、日本小児循環器学会、日本外来小児科学会

詳しい医師紹介を見る  クリニックの予約を取る
小児科顧問 三井 俊賢
小児科顧問 三井 俊賢

慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程 修了、慶應義塾大学医学部 小児科、慶應義塾大学関連病院(こうかんクリニックなど)

医学博士、小児科専門医、小児科指導医

詳しい医師紹介を見る  クリニックの予約を取る